Ethernetでは衝突発生時の再送処理アルゴリズムに起因して発生する可能性のある現象で,公平であるべき送信アクセス件の調停が,ある端末に偏る効果のことである.
連続して送信可能なたくさんの送信フレームをもった2台のネットワーク端末を想定してほしい.この2台が同時に送信を開始したとする.すると衝突が発生するが,うまくいけば次の回,悪くても数回の衝突の後にはどちらかの端末が送信権を得て送信に成功する.ここで送信に成功した端末をA,衝突送信待ちにある端末をBとしよう.
送信に成功した端末Aは次のフレームの送信を開始し,これが衝突送信待ち状態にある端末Bと再び送信アクセス権で競合する.ところがEthernetにおける再送調停アルゴリズムでは衝突回数の多い端末の平均待ち時間は長くなってしまう.結果として,新規にフレームの転送を開始した端末Aのほうが,衝突再送待ちを繰り返している端末Bより,送信アクセス権を得る確率が高いのである.ここで再び端末Aが送信アクセス権を得ると端末Bは衝突回数が累積してしまって,さらに送信アクセス権を得難い状況に追いやられてしまう.これが繰り返されると,結果として端末Aは,端末Bより優先的なアクセス権をもってしまう.
このキャプチャ効果が実際の環境でどの程度意味をもつのかはケース・バイ・ケースである.また,従来はパソコンなどの能力不足により,キャプチャ効果が発生する確率は低かったのだが,パソコンの能力の向上につれてその発生確率は高まっている.